青山久住の第5句集。第1句集から詠まれている愛猫“タフ”が登場するものはこれで最後となる。秋、タフの発病から始まってその死、その後の日々を描く。
四季を彩る花や風物、心に映ったさまざまな景色、そして、病んでなお生命の輝きをみせる愛猫の姿……かけがえのない日常の記録。
約13年、一緒に過ごした愛猫のタフが半年間の闘病を経て亡くなる。そして新しい仔猫との出会い。死から再生までを四季折々の満開の花を背景に、思い出が新しい希望に変わるまでを俳句とエッセイで綴っている。
“死の影”をともなう最初の秋から“再生”への希望にむかう二度目の秋までが、何回かの満開の花をむかえながら鮮やかに詠みこまれていく。特にタフの死を描く章では“こでまり”の白が印象的に表現され、春から初夏へむかう季節の明るさの中に死と別れが静かに進行し、切ない感情につつまれる。
愛猫タフをむかえるいきさつを描いた句集「オリオンの猫」ともあわせて読むと興味深いだろう。
1967年、静岡市生まれ、現在も静岡市に在住。東京農業大学農学部林学科卒業。家業である山林業を営むかたわら、市内で石上国語教室「青山塾」の経営・指導を行っている。祖父母の縁により、中勘助の詩碑(風のごとし)を自宅に所有。幼い頃より文化的環境、自然環境に恵まれて育つ。短歌を趣味とした祖父や父の影響の下、20代より独学で俳句を詠む。ほかの作品に「猫の瞳」「夏のカレイドスコープ」「オリオンの猫」「ロハスな猫たち」がある。猫をこよなく愛する。